遺言について

 

 

 

 遺言すればすべて遺言した通りになるわけではありません。相続人の一人だけに全財産を譲る旨遺言すれば、他の相続人には遺留分減殺請求権がありますから、遺留分減殺請求権を行使されれば、遺言者の思う通りにはなりません。また寄与分は、相続人間で合意され、合意できない場合は裁判所で判断され、遺言者が決めるものではありません。そうではありますが、遺言しておけば、相続人間の争いを出来るだけ防ぐことができます。ぜひ遺言することを検討してみてください。戦後の民主教育の結果、自分の権利ははっきり主張される方が増えています。その方が正常なことだとは思いますが、相続人間で自分の権利を譲らないで主張し合えば、その結果は悲惨なものとなるでしょう。もはや長男が家を継ぐという時代は終わりました。相続争いをさせないためにも、自分の最後の意思を家族に示すためにも、人生の最後を自分で決めるためにも遺言しておいてください。

 

このページをずっと読んでいただくと、遺言に関する基本的なことが理解できるようになっております。また費用についても説明してあります。

 

 

 

1 遺言書を作成した方がよい場合

 

  1. 相続人がいない場合

     国家に没収されてしまいます。遺言をして自分にとって一番大切なことに使ってもらいましょう。

     

  2. 子共がいない場合

     被相続人の親が死亡していると、相続人は妻と兄弟姉妹ということになり、遺産分割のための協議が難しくなることがあります。特に妻が被相続人の唯一の財産である土地と家に住んでいて、兄弟姉妹とその財産を分け合うことが不可能な場合、兄弟姉妹には遺留分はありませんので、遺言をしておけば全財産を妻に残すことができます。

 

 

 

  1. 内縁の妻がいる場合

     内縁の妻は相続できません。ぜひ遺言書を書いて、内縁の妻に遺贈しておいてあげてください。

 

 

 

  1. 再婚している場合

     再婚でできた子供だけが相続人になるのではありません。

 

 

 

  1. 家業を継ぐ者に事業用資産を継がせたい場合

 

 

 

  1. 法定相続人以外の者に財産を譲りたい場合

     自分より先に亡くなった子供の妻(夫)に財産を残したい場合、命の恩人に財産を譲りたい場合、遺言書で遺贈します。

 

 

 

  1. 相続人に行方不明者がいる場合

     遺産分割協議ができませんので、遺言書を残しておきましょう。

 

 

 

  1. 障害を持つ子により多くの財産を残したい場合

 

    遺言しないでおけば、法定相続分に従って相続されます。他の子供の遺留分を侵害しない範囲内で障害を持つ子に多くの財産を残すような配慮をすることも可能でしょう。

 

 

 

  1. 被相続人を虐待等した推定相続人がいる場合

     推定相続人とは相続が開始した場合に相続人となるべき人のことです。推定相続人が被相続人に対して虐待をし、もしくはこれに重大な侮辱を加えたとき、または推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は家庭裁判所にその推定相続人の廃除を請求できます。ようするに相続させないことができます。この廃除の意思表示は遺言でもできます。

 

 

 

  1. 事実上離婚状態の配偶者がいる場合

     配偶者があなたを虐待し、あるいは重大な侮辱を加えたとき、その他の著しい非行があった時、あなたは配偶者の廃除を家庭裁判所に請求できます。ようするにこのような配偶者には相続させないことができます。事実上離婚状態にある配偶者がおり、虐待などの事実があるならば、このような配偶者に相続させないため、遺言で廃除の意思表示をしておいてください。

 

 

 

2 遺言の方式

 

 遺言は一定の方式に従ってしなければなりません。遺言者が真の意思に従って、慎重に遺言することを要求するものです。また偽造・変造を防止するためです。

 

 遺言の方式には、普通方式として、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があり、特別方式もあります。特別方式は、死が迫り普通方式で遺言をする余裕がない場合にするものです。ここでは触れません。

 

 

 

  1. 自筆証書遺言

 

 自署さえできれば、遺言者が単独で、いつでもどこでも作成できます。しかし方式不備や、内容が不明確なため、裁判になることもあります。遺言者は、全文、日付、氏名を自書し、押印してください。使用すべき印章に何の制限もありません。日付は、作成時の遺言能力や内容の抵触する複数の遺言の先後を確定するために必要ですから、これを書かないと無効になります。また書き損じた場合は、直し方が厳密に規定されており、訂正した自筆証書遺言は裁判沙汰になることがあります。書き損じたら、基本的に最初からやり直してください。

 

 自筆証書遺言は保管が難しく、紛失したり、焼失したり、相続人によって隠蔽されることもあります。そもそも発見されないこともあります。自分自身で保管するほかに、信頼できる人に託すことも考えてください。全く同じ遺言書を複数作成して、別個の場所に保管してもいいでしょう。

 

 長所としては、簡単に作成できますし、保管の費用もいりません。証人・立会人が要りませんので、遺言書を作成したという事実そのものを秘密にしておけるのは自筆証書遺言だけです。相続人は遺言書が書かれた事実さえ知らないのですから、簡単に内容を書き直すことができます。

 

 

 

  1. 公正証書遺言

     公正証書遺言は次のようにして作られる、公正証書です。

 

  1. 証人2人以上の立会のもとで

  2. 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口述し、

  3. 公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、または閲覧させ、

  4. 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認したのち、各自これに署名押印する。ただし、遺言者が署名できないときは、公証人がその事由を付記して署名に代えることができる。

  5. 公証人が、その証書が以上の方式に従って作ったものである旨付記して、これに署名押印する。

 

 

 

司法書士が作成する遺言書は公正証書遺言がほとんどです。欠点としては、証人2人が必要であること(司法書士あるいは公証役場が用意します)、司法書士、公証人の報酬、費用がかかることです。

 

   長所としては、遺言者が120歳になるまで原本が公証役場で保管されるので、遺言者が保管していた公正証書遺言が発見されなくても、相続人が公証役場に行けば、どのような遺言がされていたかわかります。費用は掛かりますが、司法書士としてはこの方法をお勧めします。また公証人が筆記するため遺言内容が明確になり、後で裁判沙汰になる可能性が非常に低くなります。相続開始後の家庭裁判所での検認手続も不要です。

 

   また署名できない方、口がきけない方、耳が聞こえない方も遺言をこの方法ならすることができます。

 

 

 

  1. 秘密証書遺言

     遺言に遺言者が署名押印し、封をして同じ印鑑で封印し、その封書を公証人と証人2名以上の前に提出し、自己の遺言書である旨及び自己の氏名住所を申述する。公証人が、その証書を提出した日付および遺言者の申述を封紙に記載したのち、遺言者及び証人とともに、これに署名押印する。

     遺言したことは公証人にはわかりますが、その内容は誰も知ることができません。このため、遺言の内容が明確でない場合、後でもめることもあるでしょう。公証役場で保管するのではありませんから、保管面では自筆証書遺言と同じ不安があるわけです。利用する人はほとんどいません。

 

 

 

3 遺言能力 

 

  遺言者は遺言するときに遺言能力がなければなりません。15歳以上であれば遺言能力はあり、成年被後見人・被保佐人・被補助人の行為能力制限者であっても本人の意思で遺言することができます。ただし、成年被後見人については2人以上の医師が立ち会い、遺言するときに事理を弁識する能力が回復していなければなりません。

 

 

 

4 料金について

 

  公正証書遺言の場合、私の報酬は10万円です。公証人の手数料は、遺言者の財産によって異なります。「公証人手数料」で検索してみても正確にはわかりません。遺言の内容によっても異なります。公証人役場にお電話してみるのがいいでしょう。もちろん私にお電話していただければ、私自身が確認します。公証人を自宅に呼んだ場合、公証人の交通費も請求されます。また証人の費用も必要です。3000万円の財産を一人の相続人に相続させる旨の公正証書遺言の場合、公証人の手数料は6万円を超えてしまうこともあるようです。